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30.それは宝物 20
ハァハァと荒い息のまま修平がずるりと自身を抜くと俺の中からドロッとした感触が肌を伝う。
お互いに目が合うとまたキスを落として、修平は目を細めながら俺の髪を撫でた。
そして髪にキスをすれば、またぎゅっと抱きしめられる。
そんなことを繰り返しながら息を整え修平を見上げ、結局また修平のペースだったな……なんて思って少しだけ悔しかったけど、やっぱ経験値が違うからいつも俺が丸め込まれてしまう。
快楽に弱い自分が情けない。でも、これを我慢しろって言われても……できる気もしないけど。
色々と考え込んでいたら修平が顔を覗き込んできた。
「何をブツブツ言ってるの?」
「え!? 声に出てた?」
「いや、顔に出てた」
そう言ってクスクス笑うからまた悔しくて枕で修平のことを殴ってやる。
「痛いよ。千秋」
笑いながら言うやつに情けなんてかけてやるものかと、もう2、3発枕でぼこぼこと殴りながら、やっぱり修平ってズルイなって思ったんだ。
俺の初めては殆ど修平なのに、修平は俺が初めてのことなんて殆どないと思ったから……。
初めてってやっぱり特別なものだ。別にそれが全てではないのもわかっているし、修平とのこれからの時間の方が大事だ。でも、わかってるけど、やっぱり俺だってひとつくらいは修平の特別な初めてになりたい。
……って言ってもしょうがないんだけど。
すると無意識に小さなため息が漏れていた。
「どうしたの?」
「……いや、別に」
「何? 気になるじゃん」
こういうのって本当は言わない方がいいことなんだろうけど、修平に心配そうな顔をさせてしまって心が痛んだ。
「……なんか、……やっぱり修平ってズルイなぁって思っただけ」
「ズルイ? さっきも言ってたよね。どうしてそう思うの?」
と首をかしげる修平を見て、迷ったけど小さく言葉に出してしまっていた。さすがに面と向かってではなく少し目線を逸らしてだけど。
「だってズルイじゃん。俺のいろんな初めてばっかりかっさらっていきやがって」
言ってる途中に恥ずかしくなってきて修平に背を向けるように寝返りを打つと、後ろから包み込むように抱きしめられた。
そして耳元で囁くように優しく声が聞こえてくる。
「だから、ズルイ?」
「そうだズルイ……。俺ばっかり持ってかれる」
するとクスクスっと笑って、また息が耳にかかった。
「僕だってたくさんの初めてを千秋に持っていかれてるんだけどね」
その声は優しく響いていた。
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