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30.それは宝物 21

それは意外なことだったので、聞いた瞬間に振り返っていた。 「マ、マジで?」 「うん」 「何? 例えば何? 聞きたい!」 「うーん、いっぱいあるからなぁ」 「ぜ、全部教えて! 全部知りたい!」 それがどんな事なのか知りたくて堪らなくなって前のめりになるようにして修平の腕を掴む。すると修平は懐かしそうに目を細めながら教えてくれた。 「前に自分から好きだって言ったのも、好きになってもらいたくて追いかけたのも千秋だけって言ったろ? ちゃんと付き合ったのも千秋が初めてだし、手をつないだのとかも、あとは……」 それは充分に嬉しいことで、修平の話をなんとなく俺も懐かしいような気分になって聞いていた。 けど、こんな良い気分の時に限ってまた俺は天の邪鬼なところを発揮してしまう。 「でも……セ、セックスとかは初めてじゃないんだろ。……やっぱズルい」 素直に喜んでりゃいいのに。 またそんなことを言って修平を困らせてしまうんだ。 「そうだね。それはごめんね」 そう修平が素直に謝ってきたりするから、勝手に傷ついたりなんかして……。 俺ってすげー面倒くさい。 俺が俯くと、「でもね……」と修平が優しく微笑んだ。 「こんなに一生懸命になれるのは千秋だけ。セックスした後に心から繋がってるって感じたのは千秋だけなんだ。だから、千秋に出会う前の経験なんて意味ないよ」 そう言うと修平は俺の頭を撫でながら続けた。 「それにね、キスマークとか可愛く口でしてもらったのとかも初めてだったんだよね、僕」 「え? キスマークとフェラされるのも俺が初めてってこと? 修平って経験豊富なのにか!?」 「うん。あんまり自分の体を触られるの嫌いだったからね」 あっけらかんと言う修平の言葉が耳に引っ掛かった。 今、サラッと言ったけど『あんまり自分の体を触られるの嫌いだったからね』って言ったよな。 ってことは、えぇ!? つか、キスマーク今までかなり付けたぞ? フェラとかも何回か俺がさせろって言ってしたぞ……。 つか、触られるの嫌いって。俺、結構修平の体触るの好きで触りまくってるし……。 もしかして……。 もしかして俺は……やってしまったかも、と思った。 血の気が引いていくとはこういうことだ。 今更だけど。ものすごく今更なことだけど。 若干、青ざめながら。怖いけど修平に確認した方がいい……よ……な。 俺は恐る恐る、修平のことを見上げた。 「まさか、本当は嫌だけど……俺のために、我慢してくれてたのか?」

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