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30.それは宝物 23

修平のその言葉を聞いたとき、嬉しくて胸が熱くなったけど悟られないように俯いた。 千年というのは、俺の名前の意味だ。それは、ずっと前、修平と付き合う前に話したこと。 俺でもそんな話をしたことなんて忘れていたのに。 「…………千年とか大げさ」 「だって、“千秋”って“千年”って意味だろ?」 「……そうだけど。よく覚えてたな、そんなこと」 「千秋と話したことは忘れないよ」 修平のこういうとこ、すげー優しいって思うんだ。 あんな前にちょっとだけ話したことを当然のように覚えてくれている。 俺は天の邪鬼だからついつい言い過ぎてしまったり、逆に言葉が足りなかったりするのに、修平はいつもいつも優しく包み込みながら真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる。 恥ずかしいようなくすぐったいような……あったかい気持ち。 やっぱり好きだなぁって改めて思った。 そんなことを思っていたら、嬉しくて顔が熱くなってきた。 すると修平は微笑みながら優しく俺を引き寄せる。 「どう? 僕の初めてと愛情は伝わったかな?」 コクっと頷けば、クスクスと柔らかく笑う声が聞こえてきた。 「だから、千秋は僕が幸せにしてあげたいんだよ」 キラキラした修平の笑顔に照れてしまって、俺が目を逸らすと修平が被さるようにして耳にキスをしてくる。チュッとリップ音を響かせてそのまま唇で耳朶をはむと、無駄に艶のある声を響かせた。 そして俺の手を取り自分の胸に当てさせたかと思ったら、耳元で内緒話でもするかのように囁いたんだ。 「それに一番の初めてはね……」 耳に息がかかってビクッとすると、その艶のある声が染み込むように聞こえてきた。  “一番の初めてはね。千秋のことが好きすぎて、いつもこんなにドキドキしてることかな” 頭の中に直接響いた声によって俺はありえないくらい赤面し、咄嗟に顔を隠すように布団を被らざるを得なかった。 やばい、心臓が破れるかと思ったし。 修平は俺の頭をポンポンと布団越しに優しく撫でてくれたけど、お前のこういう時の声って心臓に悪いんだって。 しばらくドキドキしたのがおさまらないまま、俺は布団の中で深呼吸して気持ちを落ち着かせていた。 でも修平は何でも素直すぎるくらい真っ直ぐに伝えてくれるから嬉しい。 俺は素直じゃないからなかなか言えないけど、それも汲んでくれる修平に出会えて本当によかったと思う。 修平じゃなかったら、きっとこうはいかなかったよな。

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