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1.偶然はいたずら 7
その異様な雰囲気に少し怯んでしまう。
なんだ? 俺は殴られるのか?
いや、殴ってやりたいのは俺のほうだし。
そんなことを思いながら睨み返していると、新藤は俺のことをまっすぐに見ながらニヤリと笑った。
「僕の感情をかき乱すのはただ1人だけだよ。そういう感情ってさ、好きってことだと思う?」
「はぁ? そんなの俺が知るかよ。そうなんじゃねぇの?」
知らねーよと思いながら、俺は投げ捨ているように言った。
自分の恋もままならないのに、人の恋路とか、しかも天敵の新藤のことなんかわかるわけねぇだろ。
そんなことを思っているうちに、自分の置かれている状況が変化していることに気付いた。
つか、何この体制。
いつの間にか壁際まで追い詰められている。
すると、新藤は目を細めそのまま続けた。
「そいつとキスでもしたら好きかどうかわかるかな? どう思う?」
「俺が知るか! つか、お前なんだよ! 何で壁際に……」
睨みながら見上げた瞬間、俺の理解の範疇を超えた出来事が起こった。
近付く顔。そして、唇に伝わる感触。
なんだ?
なんだ? これは。
俺、何をされているんだ?
も、も、も、も、もしかして、キス────!?
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