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2.忘れさせてくれない 2
なぜだ。なぜ、俺の下の名前を呼んでいる。
つか、そもそも話しかけてくんなよ。
俺はいつも以上に不機嫌に新藤を睨みつけた。
きっと俺がマリエちゃんと話しているのを面白がって入ってきたんだろ。
振られたくせに取り入ってるのを笑いに来たに違いない。
でも睨まれているというのに、微笑みながら近づいてくる新藤は不気味だ。
俺は関わりたくなくてその場を離れようとした。
せっかくマリエちゃんと話してたのによ。
お前のせいで台無しじゃねぇか。最悪だ。
俺が歩き出そうとするとまた新藤が俺の名前を呼んで引き止める。
「おい、千秋待てよ。これ僕んちに忘れていっただろ?」
はぁ? 何をだよ。と思って振り返ると新藤の手の中には俺のスマホが……。
嘘だろ。てっきり走っている間に落としたものとばかり思っていたのに。
まさか、新藤の家に落としてたとかありえねぇし。
と、思った瞬間。
“新藤の家”と思い出すのと同時に、一昨日の行為も思い出してしまう。
一瞬、少しだけ顔が熱くなった気がしたがなんとか自分をなだめた。
俺が何も言わずにスマホを奪うように受け取って教室に行こうとすると、マリエちゃんが言った。
「柏木くんと新藤くんって仲良かったの?」
良いわけないよ。
こいつが勝手に名前で呼ぶだけだし……って思っていると勝手に新藤が話し始める。
「1年から同じクラスで仲いいんだ」
「そうだったんだ……知らなかった」
なに、デタラメをそんな笑顔で言ってんだクソがっ!
でも、俺の心の声なんて聞こえないマリエちゃんは新藤の笑顔にだまされていた。
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