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2.忘れさせてくれない 3
俺が呆れた顔でそのやり取りを見ていると、新藤はマリエちゃんを引き寄せて耳元で何かを囁いた。
そして、それを聞いたマリエちゃんは真っ赤な顔をして、突然走り去ってしまう。
え、何? なんで、あんな真っ赤になってたわけ?
「お、おい! 何を言ったんだよ」
「気になる?」
ニヤッと笑いながら聞いてくる新藤は悪魔みたいだ。
「気になるに決まってるだろ!」
「相変わらずうるさいな」
そう言って新藤はスタスタと歩いていってしまった。
「待てって! おいっ」
追いかけても一向に止まる気配がない新藤に苛立って腕をつかんだ。
またニヤリと笑いながら振り向いた新藤は、さっきマリエちゃんにしたように俺の耳元で囁く。
「僕は千秋の友達だから、君のことを千秋が好きなのも知ってたんだ。だから冷たくするしかなかったんだよ……って、言ったんだよ」
新藤が喋るたびに耳に息がかかってくすぐったい。
聞き終わって考える……何だそれは!?
「なんだよ! まるでお前もマリエちゃんが好きだけど俺がいるから諦めたみたいに聞こえるじゃないか!」
俺が紛らわしい言い回しに怒りながら言うと、新藤はケロッとした顔で答える。
「そう聞こえるように言ったんだけど?」
「はぁ? ま、まさか……お前もマリエちゃんが好きだったのか!?」
「本当に君は馬鹿だね。僕が好きなのは千秋だよ」
「千秋って呼ぶんじゃねぇよ。バカなのはテメェだ!」
俺が噛み付いたように言い返すと新藤はやれやれというような顔をしてため息をついた。
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