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4.引き込まれたテリトリー 12

「そんな態度じゃ教えてやらねぇ」 耳元でフフッと軽く笑った新藤は「ごめん。教えて」と言ったけど、言葉で反省の弁を述べたところできっとまた面白そうに笑っているに違いない。 でも、俺はなぜか名前の理由を教えてやってもいいとか思ってしまったんだ。 こう言うのってなんかてれくさいから、聞かれたとしても他の友達には言ったことなかったのに……。 「……千秋は“千年”の意味」 新藤は首を傾げながらも、俺のことを見つめて静かに聞いていた。 「こう見えても、生まれたては体が弱かったらしくて、親父が長生きできるようにって四字熟語の“千秋万歳”から千秋ってつけたんだ。千秋万歳って長寿を祝う意味だろ? さすがに千年は生きられないだろうけどな」 俺が話し終わると同時に、新藤はいっそう強く俺のことを抱きしめてくる。 「ちょっと、新藤……苦しい」 「僕もこれからは千秋の名前を呼ぶたびに祈るよ」 「はぁ? そんなんいらねぇよ。今は超健康体だし」 「千秋は僕に祈られていたらいい」 「意味、わかんね……っん……」 新藤は俺の少しの隙だって見逃しはしない。 だから俺はまたこうやってコイツにキスされるんだ。 「っふ……ふ、不意打ちは卑怯だ!!」 だから、俺はもうコイツに隙を見せない。 そう思って俺はまた新藤に背を向ける。 その日はいつの間にか眠ってしまっていたけど。 ……俺の中で新藤の存在が、ただキライな奴から変わってきたことだけは確かだった。

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