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5.宙に浮いた気持ち 7
絡み合った舌が、クチュっと音をたてる。
もう、腰の力が抜けて座り込みそうになった瞬間……。
「たっだいまぁ──! おーい、誰かいないの?」
玄関をガチャガチャっと開ける音とともに、元気のいい女の人の声が聞こえた。
その声に反応した新藤の隙をついて俺は新藤から離れる。
すると、その声の主はダイニングに入ってきた。
「あ、修平いたんじゃん。あれ、友達?」
そこには、めちゃくちゃ美人の女の人が……。
もしかして、新藤のお姉さん?
似ているからきっとそうだ。
そう思って見ていると、お姉さんらしき人が俺に顔を近づけた。
「私、修平の姉で瑞希 っていいまーす。何君?」
「お、俺は柏木千秋です」
「千秋くんかぁ、可愛い~」
「姉貴もう行けよ」
俺とお姉さんが話していると不機嫌そうな顔をした新藤が言う。
でも、俺はこれは逃げるチャンスだと思った。
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