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5.宙に浮いた気持ち 8

「新藤、俺帰るから。朝飯までありがとう」 「えー、千秋くん帰っちゃうの? お姉さんと遊ぼうよぉ」 俺が帰るのを引きとめたのは、お姉さんの方だった。 お姉さんにはまた今度とかなんとか上手く言って玄関まで急ぐ。 その後ろを新藤がついてきた。 「ふ、服は今度返すから。じゃあな」 と、振り返った瞬間。 見なきゃよかったと思った──。 はっとしながらも踵を返し、俺はドアを開けて走って家へと急ぐ。 胸の奥が妙にざわついた。 さっき振り返った瞬間見た新藤の切ない顔が脳裏に焼き付いて……。 なんだよ。なんで、あんな顔すんだよ。 胸くそわりぃ。 俺は気付いていなかったんだ。 小さな心の変化に気付けるほど、俺は器用じゃないから。

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