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第6章 俺だけがいない 1
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あれから後ろを振り向きもせず一目散に走って帰った俺。
母親が、あれ? 早かったわね。なんて言っているのも無視して自分の部屋で部屋着に着替え……。
今は新藤の服を洗濯中。
乾燥機の中で新藤の服が回っているのを眺めながら、モヤモヤしたこの気持ちについて考える。
新藤のあの切ない目が忘れられない。
なんで、あんな顔するんだよ。
『千秋、好きだよ』
そして昨日、何度も言われた言葉を思い出す。
そうだ……。昨日、俺……。
な、な、何を思い出してんだ!
消えろ!消えろ!
俺は頭の中に浮かんだ新藤を追い払うようにブンブンと手を振った。
くそー、どんな顔してこれから会ったらいいんだよ。
乾燥した服をたたんで、ちょうどいい袋に服を入れて学校のかばんの横に置いた。
モヤモヤする。あー、くそー!!
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