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6.俺だけがいない 6
「また小言をいわれてもしらねぇからな」
内川はそう言って呆れた顔をしていたけど。
今日はむしろ注意させる為なんだから、黙って見てろ! って思う。
俺は確信している。
そうしていると、どんどん新藤が近づいてくる。
校則違反を見逃せないお前のことだ。
これで、お前は俺に話しかけるし……か、なく……なる。
…………そう、思っていたのに。
新藤は俺の派手な柄シャツなんて見向きもせず、視線すら向けず……。
ただ、まっすぐに前だけ見て俺の横を通り過ぎて行った。
えっ⁉︎ なんで⁉︎
俺は振り向いて、新藤を目で追っていた。
「良かったな。何もいわれなくて」
「お、おう……」
ほとんど内川の話は耳に入らず、空返事しながら新藤の後ろ姿を追う。
なんで……。なんでだよ!
なんで、何も言わねぇんだよ!?
俺、柄シャツなんだぞ!
めちゃくちゃ派手な柄シャツなんだぞ!?
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