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7.夕焼けは媚薬 5
しばらくのぞき込むようにして見ていると、新藤がもぞもぞと動きはじめた。
お、起きたのか?
でも起きていきなり俺がいたらびっくりするんじゃないか?
や、やべっ、どうして部屋にいるか説明しないとだよな。
そんなことをあれこれ考えていると、ゆっくりと瞼が開いた。
新藤は目を軽くこすりながら小さなあくびをする。
寝起きだからだろうか眉間にシワがよっているのだが、俺を見るなりそれ少し深くなった気がして、また胸がチクリと痛んだ気がした。
「あ、あのさ……」
とりあえず、なぜ俺がここにいるかを説明しなくては。
「家の前でお前のねぇちゃんに会ってさ、戸締まりしろとか……言われて」
ダメだ。うまく説明できない。
そんな俺に、新藤は一言、「不法侵入……」とだけ言った。
「不法侵入じゃねぇよ。お前のねぇちゃんがお前は部屋にいるからって……」
ま、まただ……。
新藤は俺が目の前にいるのに、何の反応も示さない。
俺がこんなに必死になっているのに。
やっぱり、イライラする…───。
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