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7.夕焼けは媚薬 7
でも、口から出てくるのは悪態ばかりで……。
「お前、見てるとイライラするんだよ」
「それはさっきも同じようなこと聞いたけど」
「なんで俺のこと無視するんだ!」
「…………」
「俺は無視するくせに、どうして他の奴は無視しない! しかも、笑顔でとかムカツク」
「それは、柏木には関係ない」
……柏木、か。
もう、俺の名前も呼んでくれないのか。
そう思うと、余計に感情が高ぶってしまった。
新藤のシャツの胸元を掴んだ手は少し震えている。
もう、限界だ。
「ムカツク。……ムカツク! なんで俺がこんなにムカつかなきゃいけないんだ!? お前のせいなんだぞ。お前のこと考えてると余裕がなくなるんだ。考えたくないのにいつの間にか考えてるのはお前のことで、そんな自分も嫌になる! そんな気持ちがお前にわかるのか!?」
「……さぁ、どうだろう」
自分でもやっと気付いた気持ちでこんなに苦しいのに、新藤にそんな気の無い返事をされて胸が引き裂かれるように痛くなる。
感情的になりすぎて支離滅裂だったことくらい自分でもわかってる。
またそれが100%八つ当たりだったことだって。
でも、俺は……もう無視されたくないんだよ。
「……好きなんだよ、新藤のことが。だから……無視、するな」
こんなに震えながら何かを言ったことって今までにあっただろうか。
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