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7.夕焼けは媚薬 9
久しぶりに名前を呼ばれて、顔がかぁーっと熱くなる。
でもそんなことを悟られたくなくて、語気を強めながら言い返した。
「何がよく出来たねだよ! さっきから意味がわかんねぇんだよ!」
「相変わらず鈍いな」
そう言ってクスクス笑う新藤を見ていると、なんかバカにされたみたいで気分が悪い。
「ちゃんと説明しろよ」
すると新藤はクスリと笑いまた俺の髪をすきながら話し始めた。
その眼差しはとても暖かくて、くすぐったくてちょっと気まずくなるくらい。
そして、俺に向けられている声はすごく優しかった。
「千秋の気持ちが聞けて嬉しい。やっと言ってくれたね」
「まさか合格って……」
「どうやったら千秋に意識してもらえるかいろいろ考えたけど、やっぱり効果てきめんだった」
「もしかして……」
「僕の気を引こうとして派手なシャツ着てきた千秋は最高に可愛かったよ」
新藤は「あれ、どこで買ったの?」なんて言いながら思い出したのか肩を震わせながら笑っている。
効果てきめんって……。
な、な、な、なんだとー!?
俺は……俺は……俺は、新藤にずっと踊らされていたのか!?
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