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8.ひとりじめしたい 4
くそコノヤロウがっ!
「ふざけんな。お前になんてキスなんかしないんだからなっ」
俺がわめくのをハイハイなんてニッコリ笑いながらかわす余裕な態度もムカつく。
本当にもうキスなんてしてやるもんかっ!
膨れ面のまま新藤について階段を下りていくと、新藤の姉ちゃんが出かける準備をしていたとこだったようで。
「あ! おはよう、千秋く~ん。昨日は泊まってたんだねぇ」
「あ、はい⁉︎」
すっかり家の中は新藤と自分だけだと思い込んでいて、姉ちゃんの存在をうっかり忘れてた。
「そうだったんだ! こんな日に限って私は早く行かなきゃだし。今度こそ一緒にご飯食べようね!!」
「は、はい……」
「姉貴、早く大学に行けよ」
「何よ、ちょっと千秋くんと喋ってただけでしょ?」
もしや昨日のアレとか、さっきの会話とか聞かれてやしなかっただろうかと、少しおっかなびっくり話していると、俺と話していたはずの新藤の姉ちゃんは横から話に割ってはいてきた新藤と姉弟ケンカを始めてしまった。
「姉貴が千秋と話すことなんてないだろ」
「だって、千秋くん可愛いんだもん」
「はぁ?」
「あー怖い怖い。わかりましたよ。学校に行けばいいんでしょう? じゃ、千秋くんまたね」
「あ、はい」
新藤の姉ちゃんは出かけていった。
でも、あの感じだったら何も怪しくは思われてなさそうでホッとしていると、ため息をついた新藤が、なぜか今度は俺のことを睨みつけていた。
「あんまり姉貴と仲良くするな」
「はぁ? なんでだよ」
「千秋のそういうところが心配なんだ」
そういうと、新藤は俺に背を向けてダイニングキッチンに入っていってしまう。
意味がわからなかった俺は新藤を追いかけた。
「なぁ、どういう意味なんだよ」
俺が駆け寄ると、振り向いた新藤はそのまま俺のことを抱きしめてくる。
「僕以外を見られると、全部に嫉妬するからね。特に姉貴はダメ」
「どうして?」
「僕たち好みが似てるから」
好みが似てるから近づいてはいけない?
もしや、それって……姉ちゃんが俺のことを好きにならないようにってか?
「いや、それはないだろ」
「いや……ある」
そういうと新藤は俺にまた深いキスをしてきたんだ。
反論したい言葉もろとも塞ぐようなキスはズルい。
そして俺の力が抜けてきたのを見計らったかのように唇を離して、新藤はニッコリと笑うと朝食の準備をはじめた。
俺はえらく嫉妬深いのにつかまってしまったみたいだ。
つか、自分の姉ちゃんにまで嫉妬とかってどんなだよ。
そんなに嫉妬される価値が俺にあるんだろうか?
よくわかんねぇ。
でも、そんなのもちょっと嬉しかったり……。
なんて、そんなこと絶対に言わないけれど。
俺も、新藤にえらくハマってるみたいなのもやばい。
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