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8.ひとりじめしたい 5

本日の新藤家の朝ご飯は完璧な和食だった。 何、あのだし巻き卵。ふわっふわすぎてやばいし、ご飯た炊きたてだし、味噌汁上手いし。 こないだのクロワッサンもびっくりしたけど、ほんとこいつに出来ないことってあるのかと本気で思う。 そして、新藤の家で朝食を済ませて一緒に登校することに。 本当は別々に行こうとしたのだが、新藤が嫌がったのでこうして登校してるわけだ。 下駄箱で上靴に履き替えていると、内川が声をかけて来た。 「おはよう」 「おはよ!」 俺たちが談笑していると、上履きに履き替えた新藤も近づいてくる。 「千秋!」 なぜか少し不機嫌そうにした新藤は俺の腕を掴んで歩いていった。 「なんだよ! いきなり」 「朝に言った事忘れた?」 「はぁ?」 「僕以外を見られると、全部に嫉妬するって言ったよね」 はぁ? こいつバカなんじゃねぇの⁉︎ 「なんだよ! 内川は友達だろ?」 「前から気に入らなかった。僕の千秋に近づきすぎだ」 「いや、あいつ彼女がいるから」 「関係ないよ」 いや、あると思いますよ。 つか、俺の友達を勝手にホモにするなって。 話を聞けや! コノヤロウ! 「心配なんかするな」 「嫌だ」 このやり取りに、だんだんイライラしてくる。 こいつは自分のことは棚に上げて好き勝手ばかり言うからだ。 「つか、お前は人のこと言えるのか!? マリエちゃんとのことを忘れたとは言わせねぇぞ‼︎ 俺にばっかり嫉妬させて楽しんでやがったのはどこのどいつだ!!」 「僕は千秋に嫉妬させたかったからいいの。でも、千秋はダメ」 「はぁ? なんで俺はダメなんだよ!」 そんなの理不尽だって言ってやろうと顔をあげたら、新藤がすっと耳元に顔を寄せて囁いたんだ。 「そんなの、僕だけを見てて欲しいからに決まってるじゃん」 耳から脳に響く声に、俺の顔は真っ赤になっていった。 あんなに怒っていたのに、こんな一言で大人しくなってしまうなんて、俺はお手軽だと思う。 俺が大人しくなったのを見て、新藤は満足げに笑うのがやっぱむかつくんだけど。 言い返す言葉が見つからないでいると、新藤は教室に向かって歩きはじめた。

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