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8.ひとりじめしたい 8

新藤の笑顔の裏が見えた気がしてこっちまで青ざめていると、内川が思い出したように時計を確認して、「悪ぃ、今から彼女とデートなんだわ。また、明日な」そう言って去っていく。 内川を見送ると、新藤がにこやかに俺のことを見ていた。 「僕たちはどうする?」 「どうするって何が?」 「デートする?」 「は、はぁ? しねぇよ」 「じゃ、うちに来る?」 「い、行かねぇし」 新藤が余りにもナチュラルにそんなことを言うものだから、少しだけ頬が熱くなる。 でも絶対に気付かれたくなくて言い返したのに、はぁーっとため息をついた新藤はやれやれといった表情で俺のことを覗き込んだ。 「そんな真っ赤な顔をして説得力ないんだけど」 指摘されるとと余計に赤くなるだろ、バカヤロウ! ムカついたのとバツが悪いのとで俺はさっさと門に向かって歩き出しす。 すると後をついてきた新藤が追い抜きざまに俺に聞こえるように呟いた。 「やっぱり千秋も女の子がいいいのか……。じゃあ僕も女の子と遊んでこよう」 は⁉︎ な、なんだって? なんでそういうことになるんだよ。 やっぱりってなんだ? つか、僕もって何だ? 女の子と遊んでこようって何だ!? こんなこと言ったら新藤の思う壺だと思ったけど、言わずにはいられない。 「ちょ、ちょっと待て!!」 「ん?」 ん? じゃねぇよ。 「女の子って何だよ!」 「そのままの意味だけど。千秋は僕とはどこにも行きたくないみたいだし、僕の家にも来てくれないみたいだし。千秋にとって僕はそれくらいの存在なわけだ」 「いや、話が極端すぎやしませんかね?」 「僕にとってはそれくらい重要。だから他の子と遊んでくるから気にしないで」 なんていいながらあいつはスタスタと歩いて行くではないか。 そりゃ、新藤はモテるから遊ぶ相手なんていっぱいいるのかもしれないけど。 なんなんだよー!! 新藤のせいで、またイライラが溜まっていく。 「待てよ!」 俺は新藤の腕を掴んで引き止めていた。 「どうしたの?」 「だから……行くなって」 「どうして?」 くそー、こいつは絶対にわかってて聞いているに違いない。 俺が恥ずかしがるのを楽しんでいるんだ。 でも……、このまま女の子と遊びに行かれるのは嫌だし。 すごく恥ずかしいけど。でも、それでも言わなきゃ伝わらない 「……俺といろ」 本当に小さな声でボソボソ言うことしかできなかったけど、新藤はしょうがないなぁと言いながらも嬉しそうに笑った。 でも、その笑顔はとても優しげで、機嫌も凄く良かった。

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