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8.ひとりじめしたい 9

「それじゃ、どこに行く?」 「新藤はどこに行きたいんだよ」 「千秋の家かな」 はぁ? 俺んち? 「俺んち何にもないけど……」 それでもいいと言うので、新藤を連れて帰ることになったのだが……。 本当にうちには何もないし。 うるさい母さんはいるけど、何もないし。 新藤みたいに、うまい飯を振舞えるわけでもないんだけど。 チラッと新藤のほうを見ると、なぜか嬉しそうにしている。 そんなに、俺んちに来ることが嬉しいんだろうか。 ✳︎✳︎✳︎ 「ただいまー」 「おかえりー。あら、千秋のお友達?」 新藤は深々とお辞儀をしながらこれまた完璧な笑顔で母さんに挨拶をしていた。 「はじめまして。新藤修平といいます」 「新藤くん。まぁ~びっくりだわ。千秋の友達にこんなイケメンがいたなんて」 ミーハーな母さんはすっかり新藤を気に入ったみたいだ。 「早く上がれよ」 少しイライラしながら言うと新藤は笑っていたが、母さんは小言を言ってくる。 うるさいなぁと思いながら俺が階段をのぼっていくと、新藤は軽く母さんに会釈して俺の後を追ってきた。 そして、俺の部屋に入ると新藤は部屋を見回していた。 「へぇ、ここが千秋の部屋なんだ」 「狭くてすいませんね」 「いいじゃん。なんか近くて」 すると、新藤が俺のことを抱きしめてくる。 「オイ、コラ待て! 母さんが来たらどうするんだ!?」 「来たら離れるから、もう少しこのまま……」 そんなこと言われたって……。 そんなにくっついてたら、俺……。 そんな時、階段を上ってくる足音が聞こえた。 絶対に母さんだ! 「母さんだ! 離れろって」 「お母さんじゃないかもしれない」 いやいやいやいや、絶対に母さんだから。 つか、家には母さんしかいなかったから。 絶対に部屋に入ってくるから。 ジュースとか持って入って来ちゃうから。 足音はどんどん近づいてくるのに一向に離れようとしない新藤にドキドキさせられる。 ガチャっと部屋のドアの開く音がした。

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