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8.ひとりじめしたい 13

「お前な、そういうことを言って恥ずかしくないのか?」 「恥ずかしくないよ。僕の話を聞いて恥ずかしがってる千秋を見るのが楽しいし」 このクソボケ! と、思わず悪態つきながらまた俯いてしまうと、新藤がクスクスと笑っている声が聞こえてきてさらに腹が立った。 でも、こうやって新藤が俺に構えば構うほどに、心のどこがでなんで俺なのかなって思うこともあるのも本音で、俺は恐る恐る少しだけ視線を上げる。 「……新藤はさ、なんで俺が好きなんだよ」 「聞きたい?」 「べ、別に聞きたかねぇけど! でも、お前って女子にモテるのに……なんで俺なのか? とか思って……って、別に気になってるわけじゃないからな!!」 すると、新藤は肩を震わせながら笑った。 きっとまた俺のことをバカにしてるに違いない。 そう思っていたのだが、ふわっと俺の髪をすきながら優しい手つきで撫でられると思わず顔を上げてしまう。 「本当に、君は可愛いね」 「だから、可愛いとか言うんじゃねぇ」 新藤の目が柔らかく細まった。 「コロコロ変わる表情と僕に媚びないところに惹かれたのかな」 「はぁ? なんだそれ」 「千秋はすごく表情が豊かだし、絶対に媚びない。だから、気になった」 これは、褒められているのだろうか……。 なんか新藤の優しそうな声と手の感触とか相成って、胸の真ん中がむずがゆい感じ。 でも、俺は感情を新藤みたいにストレートに表現するのが苦手だからいつも思っても無いことを言ってしまうんだ。 「そんなん、女にもいるだろ?」 「いなかったね。みんな僕に好かれようと必死だから」 きっぱりと言い切る新藤に唖然とする。 それを自分で言えちゃうところがスゲーよ。確かにコイツはモテモテですからね。 「女子にモテていいことじゃないか」 「そんなのつまらない。自分の心を乱してくれる相手以外に好かれても意味がない」 「それが……俺?」 「そうだよ。でも、どうしてそんなこと聞きたくなった?」 どうしてって言われてもなぁ。 だって、どう考えても男同士なわけだし。 やっぱり、新藤だって女のほうが……とか。 「何が聞きたいの? はっきり言ってよ」 「……なんて聞いたらいいかわからない」 「僕が何か不安にさせてる?」 「ちがう! そうじゃない。……ただ、俺の問題」 こんな気持ちになったのだって初めてで俺だってわかんねぇんだ。

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