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8.ひとりじめしたい 14
不安そうな顔をしている新藤をみていると胸が痛くなる。
でも、俺だって不安で……。でも、苦手でも言葉にしないと伝わらないわけで。
言葉にすることはすごく難しいことなんだけど、少し俯きながらボソッと呟くように言った。
「……どうやったらお前を繋ぎ止めておけるんだろうな」
でも、新藤は何も言わずに沈黙の時間が続く。
すぐに何か言い返してくれると思っていたのに何も言われず、不思議に思った俺がゆっくりと顔をあげると、なぜか新藤はあっけに取られたような表情をしていた。
何だ? 俺、変なこと言ってしまったのか?
やっぱり、ウザかった?
俺が焦っていると、今度は笑い出した新藤。
なんだ、テメェ! こっちは真剣に、恥ずかしいのを我慢して言ってやったって言うのに。
笑うとは何だ!! と言おうとした、次の瞬間。
新藤が俺のことをきつく抱きしめた。
「な、何!?」
「だから、反則だって」
「はぁ? 何がだよ」
すると、新藤は抱きしめた手を緩めて俺の正面で優しく笑う。
「僕だってね、千秋をどうやって繋ぎとめようか必死なのに。どうしよう、千秋が可愛すぎる」
「か、可愛いとかは関係ねぇだろ」
「千秋、安心して。僕は千秋が嫌がっても手放さないから」
「はぁ!? なんだそれ」
そう言ったものの、胸がぎゅっと掴まれる様に苦しくなるとともに、嬉しくてたまらなかった。
新藤も同じようなことを考えていたことも、それに必死になっているって言ってくれたことも。
どうしよう、新藤ことが好きでたまらない。
少し前まで嫌いでたまらなかった新藤に対してこんな感情を持つなんて思ってもみなかったのに。
わかりやすく“俺の”って名前でも書けたら少しは安心できるのかな……とか、出来もしないことを考えていると、新藤は俺から手を離すとベッドにもたれたまま大の字になった。
「なにやってんだ?」
「好きにしていいよのポーズ」
「何だ? その、好きにしていいよのポーズって」
「僕がどこにも行かないように好きにしていいよってことだよ。印でもつけとく?」
ニッコリと笑うと新藤はそんなことを言ってきた。
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