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8.ひとりじめしたい 16
「つけたことないんだからな。上手くつけられるかわかんねぇし、それにやめろって言ってもやめねぇからな!」
「うん。いいよ」
俺はベッドを背もたれにして座っている新藤に跨るようにして馬乗りになった。
「なんか、千秋に攻められるみたいで興奮するな」
「アホかっ!」
茶化されて余計に恥ずかしくなり眉間にしわを寄せてしまうけど、
ゆっくりと新藤の肩に手を置いて、新藤の首に指を這わせる。
「ここでいい?」
「好きなとこでいいよ?」
こんな風に新藤を見下ろすことってあまりないから少しドキドキしてしまう。
ゆっくりと近付き、新藤の首筋に吸い付いた。
けど、吸い方が弱かったのか少し赤くなっただけでうまく付かない。
「もっと吸わなきゃ跡がつかないよ」
「わ、わかってるよ! 今からやろうとしてたんだ!」
新藤が笑うので決まりが悪い俺は、今度は思いっきり吸い付いた。
すると、今度は真っ赤に充血した跡が付いてしまって、それはそれで少し焦ってしまう。
でも、新藤は満足そうに笑っていた。
「1度してもらうともっとしてもらいたくなるね」
「もうしねぇかんな!」
「それは残念だ」
新藤は変なやつだ。
新藤の首筋にはくっきりとキスマークが付いている。本当にどうやっても隠れない場所に。
しかも力任せに吸い付いたんだってわかるくらい、それは不恰好なキスマークで。
「なんか……ごめん」
思わず謝らずにはいられなくなる。
「どうして謝るの?」
「いや、なんとなく」
「消えるまでは噂の的だろうね?」
新藤は楽しそうに笑っているけど本当に噂の的だと思う。
俺は知らないんだからな!
すると、新藤がにこやかに笑いながら俺の手を引いた。
「千秋」
「ん?」
「やっぱり、もう1つ付けてよ」
「え! やだよ」
「今度はここに」
そう言って新藤は、さっきとは逆側の鎖骨上くらいを指さした。
これもまたビミョーな位置を言いやがって!
「2つも付いてたらめちゃくちゃからかわれるぞ」
「ちゃんと付き合ってる人がいるからって言うから大丈夫」
「つ、つ、つ、付き合ってるって言うのか!?」
「心配しなくても言わなきゃ相手が千秋だとは誰も思わないよ。それにね、僕に付き合ってる人がいるってわかった方が好都合なんじゃないの?」
そう言うと新藤は俺を見て、微笑んだ。
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