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8.ひとりじめしたい 17

新藤に付き合ってる人がいるとわかれば、新藤を虎視眈々と狙う女子は減るのだろうか。 普通は付き合ってる人がいたら諦めモードになるよな。 そうすればコイツの周りの女子が減って、目移りする確率も下がる……。 って、俺は何を考えてんだよ! これじゃあ、俺がめちゃくちゃ好きみてぇーじゃねぇか。 ……いや、好きなんだけどさ。 うわー、何好きとかサラッと思っちゃってんだよ。 自分のことだけど恥ずかしいんですけどー! 「さっきから何をぶつぶつ言ってんの?」 「え!? 声に出てた!?」 俺が目を丸くして、そう言うと新藤はクスクス笑い始める。 「嘘だよ。なんか百面相してるから言ってみただけ」 「ま、また騙したな⁉︎ このクソボケが! もう頼まれても付けてやんねぇーかんな!」 「ごめん。もうしないから、付けてよ」 新藤はそう言いながらも、きっとまた同じことをするに決まってる。 笑いながら謝るコイツが本当に反省しているわけないからだ。 でもそんなコイツの笑顔に胸がキュンとしている俺は重症なわけで、引きつけられるように新藤の唇にキスをした。 男のくせに柔らかい感触の唇は何度キスしても気持ちよくて、キスするたびにコイツが好きになる気がして少し怖くなる。 俺の方が好きになりすぎていつか捨てられるんじゃないか……とか、そんな不安がよぎってしまう。 今まで誰とも付き合ったことが無かったからわからなかったけど、 付き合うってラブラブピンク色だけの世界だと思っていた。 でも、実際は好きになればなるほどに心の真ん中に言いようのない感覚が生まれるんだって知った。 きっとそれが俺にとっては新藤自身で、日に日に大きくなって俺を支配していく気がする。 もしこの先に別れが来たら、その部分が引きちぎられて穴があいてしまうんじゃないか。 好きになればなるほど、その可能性でしかない未来が不安でたまらなくなる。 俺は既に、かなりの部分を新藤に浸食されているんだと思う。 どうしよう。好きすぎる。 コイツが……。好きでたまらない。 新藤が欲しくてたまらない。 そう思うと、俺は無意識に自分から積極的に舌を絡めていた。 うまくできてるかはわからない。 けど、唇を離したときの新藤の高揚した色っぽい顔をみて少し嬉しかった。 「千秋、どうしたの?」 目を細めながら手を伸ばした新藤の腕を取った。 もっと、俺のって印を付けたい。 もっともっと、ひとりじめしたい。 「───…そんなにつけて欲しいなら体中に俺のって印を付けてやるよ」 そう言いながら俺は新藤のシャツのボタンを外し始めた。

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