112 / 622

9.打ち震える鼓動 4

新藤のがビクビクしているのがわかった。 「……ッ…………」 もうすぐイキそうなのかもしれない。 そう思ってより奥へと深く咥え込み、ぐうっと吸うようにすれば僅かに新藤の腰が揺れて、吐息交じりの声が漏れる。 新藤はさっきからずっと俺の髪の毛を触っている。 たまに見上げると気持ちよさそうにしていて、俺まで気持ちよくなるんだ。 「千秋……っ……」 少し掠れた声で俺の名前を呼びながら、はぁっと堪らないような息を語尾に加えられ、 いよいよ新藤のを受け止める時が来たか!? と思ったときだった……。 「千秋ー! ちょっとおりて来てー!」 俺たちの甘い時間を邪魔をしたのはすっかり存在を忘れていた母さんだった。 くそ、うるせーよ! 黙りやがれ。 そう思いながら、続けていると新藤が俺の頭を上げさせる。 「いいから、行ってきて」 「無視すりゃいいんだよ」 こんな状態のコイツを置いていけるわけねぇだろ。 すると、俺がおりてこないから痺れを切らした母さんが階段を上ってくる音がする。 くそ、どうせ大した用事でもないくせに上って来やがった。 「はやく行ってきた方がいいと思うよ」 新藤は俺にそう告げる。 「無視したらいいんだよ。鍵だってかかってるし」 「でもさ、一般的に考えて勉強してるだけで鍵ってどうよ? それに開けたら僕、見えちゃうんだけど」 オイ、それを鍵かけた張本人が言うなよ! しかも見えるなら隠れろよ! と、思ったものの……確かに一理あるかもしれない。 母さんからみたら、新藤はただの男友達だ。 それが普段全く使用しない鍵なんかかけて部屋にいたら変だよな。 変に勘ぐられるのも面倒くさいし。 や、や、や、やばくね? 俺は急いで鍵をあけて廊下に出た。 母さんは階段を上がったところまで来ていて、もう少し遅かったらドアを開けた瞬間に新藤が見えてしまっていたかもしれない。とにかく間一髪だった。 でも、何も知らない母さんは何やら嬉しそうに夕飯の話を始める。 「千秋、今日ね新藤くんに夕飯食べていってもらおうと思ってるんだけど。新藤くんは何が好物かしら?」 「何でも食うよ」 「でも好き嫌いとか」 「ないんじゃない?」 「えー、新藤くんに聞いてみないと」 別に夕飯のおかずなんてなんでもいいのに、母さんは新藤に直接聞くと言ってあろうことかドアノブに手をかけようとした。 中には半裸の新藤がベッドに横たわっているわけだから、まずいと思って咄嗟に出た言葉は。 「待て! 新藤は、しゅ……集中してんだ!」 なんとかドアを開けさせないための苦しい嘘なんだが……。 咄嗟に出た言い訳としては、イマイチなことしか言えなかった。

ともだちにシェアしよう!