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10.溺れれば夢中 2
むせていると、俺が焦っている理由などまるでわかってない内川が顔を覗き込んできた。
「ん? 柏木、どうかしたのか?」
「い、いや別に。詰まっただけ」
「そうか。で、そのキスマーク付けた子ってどんな子なんだ?」
内川の奴め。俺が大丈夫と言えば、すぐに新藤に話の続きをせがみ、身を乗り出して待っている。
薄情な奴だと思うが、新藤は新藤で面白そうに笑いながら答えているのがまた問題だ。
「可愛い子だよ」
「新藤の彼女だもんなぁ。すんげー可愛いんだろうな~」
なんか、すまん……内川。
「内川くんだって彼女いるんだろ?」
「うん……そうなんだけどね。倦怠期ってやつ」
「倦怠期って何?」
聞き慣れない言葉が出たので俺が内川に聞くと、内川は軽く溜め息をついた。
「なんか冷めてるていうか、冷められてるていうか……そういう時期」
「こないだまでラブラブすぎて困るとか言ってやがったじゃねぇか」
「いろいろあるんだよ。最近はエッチもさせてくれないしさ。新藤はどうなんだよ? ヤってんの?」
倦怠期というやつでイライラしているのか何なのか知らないけど、今度は大胆にも新藤にそんなことを聞きやがる始末。
つか、そんな話は俺がいないところでしてくれ!
と叫びたいけど……それも出来ない。
すると、新藤は俺に軽く視線を流しながらニヤリと笑い、自分の首にそっと手を当てた。
「まぁね」
「そうだよなぁ、でっかいキスマーク付けてんだもんな。でもさぁ、ただですら新藤はモテるからヤリまくりだったんだろ?」
「さぁ、それはどうだろうね」
なんてコイツは余裕げに笑っている。
そんな態度とか表情とかがムカつくんだけど、本当のところはどうだったんだろう? って、気になってしまうのも仕方ないことで。
ヤリまくり……だったんだろうな。
なんせモテモテの新藤くんだもんな。
俺がそんなことを考えている間にも新藤と内川の話は進んでいった。
「そうだったんだろ? モテるやつはいいよなぁ」
「でも、今は一筋だよ」
「何、その子そんなに可愛いの? それかテクニシャンなわけ?」
「僕が初めてらしいけどね。癖になるほど可愛くて……エロい」
ブーっとまた俺は牛乳を吐き出してしまう。
なんだお前、その言い方は。
俺は無言の抵抗と言わんばかりに新藤を睨むも、また余裕しゃくしゃくと言った様子で新藤は笑っている。
内川は内川でかなり興味を持ったようで、掘り下げていこうとしているではないか。
もうこの話はやめてくれー。
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