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10.溺れれば夢中 3
さらに興奮気味の内川はさらに身を乗り出して新藤の話を聞いている。
「可愛くてエロいとか……めちゃくちゃヤベーじゃん」
「そうなんだよ。しかも、昨日はその子から襲われてさ……」
そう言って新藤は首筋にあるキスマークを指差した。
つか、それ以上話すなー!!
悪戯っぽい目でちらっと俺を見たりする時点で、絶対に新藤は面白がってわざと内川に話をしているんだ。
俺が恥ずかしそうにしてるのを見て楽しんでいるに違いない!
絶対そうだ! クソ新藤め!
俺は聞いていられなくなって話もそこそこに用事があるからと先にその場を去る。
そしてトイレでも行こうと思い、廊下を歩いていた。
聞いてるだけで恥ずかしいあの会話から解放されて、歩きながら思い出してしまうのはさっきの新藤の話だ。
やっぱり、新藤は女も経験あるんだろうな。それも、俺が想像するよりはるかに大多数。
あの余裕の笑顔は絶対そうに決まってる。
それに、めちゃくちゃ上手いし……。
って俺は、ああいうの初めてだから比べる相手なんていねぇけど。
……つか、童貞だし。
ん?
その時、ふと自分で思った言葉が引っかかった。
…………童貞だし?
………………………………そうだ。
俺は童貞じゃねぇか!
好きな子が出来てもフラれるばかりで付き合ったこともない。
そんな俺だって、キスやセックスの経験はある。
……でも、男。
しかも、入れられるほう……。
やべぇ、自分で思ったことなのに大ダメージなんだけど。
こんな当たり前すぎることに今更気付くなんて。
このままだと俺はずっと童貞のままじゃねぇか。
なんだろう、なんかすごくムカついてきた!!
アイツばっかり好き放題しやがって、俺は童貞のままなんて絶対におかしい!
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