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10.溺れれば夢中 4

俺にだって童貞を捨てる権利があると思う。 いや、童貞を捨てる権利ってなんだとも思うけど、とにかく権利があるはずだ。 俺だって男だし! 俺だって! 出来る!! いや、なんか昨日もこういったノリで失敗したような……。 とか、一瞬弱気になりそうになったけど、そんな事ないと自分に言い聞かせながらかぶりを振る。 でも、やっぱり上手くいくとも思えないのも正直なところで。 結局のところ、……このままだと俺は一生童貞なのかな。 つか、一生!? 一生ってオイオイ。 何、俺は一生、新藤と……なんて想像してんだよ。 思わず想像してしまった事に急に顔が熱くなってきて、それを抑えるように両手で頬を軽く叩いた。 ……つか、俺。一人で何をぐるぐる考えているのだろう。 でも、前ほど童貞が恥ずかしくも嫌でもない気がする。 俺の頭の中を支配している奴がいる限り、他の子とどうこうってのもなぁ……そんな気にもなれない。 かといって新藤をやるってのも……出来んのか!? いや、無理だと思う。想像もできねぇし。 だから、アイツといる限り俺は童貞決定なんだろうな。 俺に言い寄ってくる女もいないしなぁ。 はぁ……っとため息をついた、そんな時だった。 「柏木くん!」 いきなり後ろから呼び止められた。 声のする方向を向くと、そこには小柄な女子が立っている。 確か、1年のときに同じクラスだったような……名前なんだったかなとか、考えていると。 「柏木くんってば!」 「あぁ、悪い。何?」 「あのね、今日の放課後に……体育館裏に来てください!!」 それだけ言うと、彼女は猛烈ダッシュで走り去っていってしまった。

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