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10.溺れれば夢中 5
何だったんだ? さっきのは一体……。
「あれは告白する気だな!」
すると、いきなり後ろから声がしてビクッとなる。
振り向くと内川と新藤がいて、もしかしてさっきのも見られてたのだろうか?
「な、なんだ内川かよ。びっくりさせんな」
「放課後に体育館裏って告白の定番じゃん。な、新藤」
「ベタすぎる気もするけど。良かったな、千秋」
新藤までそんなことを言うものだから眉をひそめていると、内川がわざわざ忠告するような言い方で言ってくる。
「でも、柏木。前のマリエちゃんの一件があるから、また新藤狙いかもしれねぇし浮かれすぎるなよ」
わざわざ言われなくてもわかってるって!
マリエちゃんはガチで新藤狙いだったわけだが、他にも俺と新藤が仲が良いという噂が回ってからというもの、新藤狙いの女子が俺と友達になろうとしてきたことが何度かあった。
今回もそのパターンかもな……。
そうしていると内川の携帯が鳴り出す。
「あ、彼女から電話だ。ちょっと俺、どっかで隠れて電話してくるわ」
そう言って内川が携帯を片手にどこかへ消えたので新藤と二人きりになった。
すると、二人きりになった途端に新藤は目を細めて俺の顔を覗き込んでくる。
「告白されるかもって嬉しい?」
「はぁ? 何だソレ」
「いつもフラれてばかりだから、もっと喜んでいるのかと思っていたよ」
「バ、バカヤロー……俺には……」
そこまで言いかけてしまい、顔がカーッと赤くなっていくのがわかる。
またうっかり恥ずかしいことを言いそうになってしまって俯くと、新藤の柔らかい声が耳をくすぐった。
「俺には……何?」
コイツはまたわかってて俺に言わせようとしている。
この悪戯に笑っている顔が証拠だ。
フンッと俺が後ろを向くと、新藤が耳元で囁いてきた。
新藤の左手が俺の腰に触れる。
そして、俺にしか聞こえないくらいの声量で囁いた。
「今から千秋を抱いて、僕のだってもっと染み込ませてあげようか?」
耳に当たる新藤の息がくすぐったくて、体がビクッと反応してしまう。
脳内に直接響くようなその声は、それだけで体を熱くなってしまいそうになるから困るんだ。
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