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10.溺れれば夢中 6
クソーなんなんだよ。コイツはよ!
俺はまた睨みつけるように新藤のことを見る。
またいつもの癖で悪態つきそうになってしまうけど、でも今日はなぜか不思議と思ってることがそのまま口に出た。
「そんなことしなくても染み込んでるっつーの」
すると新藤が今度は子供みたいな満面の笑みなんかを浮かべるもんだから、なんか居た堪れなくて俯いてしまった。
でも、そう言うのも悪くないなって思っている自分も少なからずいて。
やっぱり好きなやつとじゃなきゃ、何だって意味ないよ。
「バシッと断ってきてやるからちゃんと見とけ!」
だから俺はそう得意気に言ってやったんだけど。
「千秋。意気込むのはいいけど、まだ告白されたわけじゃないんだからね」
冷静に返されて意気込んでいたのが恥ずかしくなって真っ赤になる俺の顔。
なんだよ、さっきまで告白かも! なんて人を散々上げていたのはお前なのに、ここで落とすのか!?
すると新藤がクスクスと笑った。
「千秋、その顔おもしろい」
なんだと、コノヤロー!
人の顔を見てクスクス笑う新藤がムカついたので、不機嫌な顔のまま新藤に背を向けて歩き出したのだが、すぐに腕を掴まれて引き寄せられる。
よろけてしまい、ポスッと新藤の胸の中に納まってしまった。
「おい、何するんだよ」
「僕は引っ張っただけ。よろけて抱きついてきたのは千秋の方」
「なっ……!?」
あーいえば、こーいう! 口答えばかりするヤツめ!
捲れたまま顔を上げると新藤はまた目を細めて笑ったんだ。
「本当に千秋は可愛いね。絶対に他の人のものにならないで」
なるかボケ!
そう思ったけど、新藤なんかに言ってやるもんか。
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