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10.溺れれば夢中 8
──放課後。
俺は体育館裏にやってきた。
まだ、あの子は来てないみたいだ。
告白だったらどうしよう。
したことは何度もあるけど、されるのは初めてで……新藤にビシッと断ってくると言った手前、早く済ませて帰りたい。
いや、まだ告白と決まったわけじゃないか。
そんな待っている時間が、俺には悪影響を与えていく。
ふと……もしも、彼女が俺のことが好きなら……って、ある事が頭によぎってしまった。
それは考えるだけでも失礼なことで、浮かんだことを振り払う。
最低なことを考えてしまった。言葉にするのも嫌なくらい最低なことを。
もしかしたら童貞捨てるチャンスなんじゃないか……なんて一瞬でもよぎった俺はズルイし、最悪だ。
「柏木くん!」
少し落ち込んでいたときに彼女が現れた。
「柏木くん。よかった、来てくれた……」
走ってきたのだろうか。
彼女はかなり息を切らしていた。
そして、軽く息を整えると彼女は俺に向かって話し始める。
「1年のときに同じクラスだったんだけど……私の名前、覚えてる?」
「……そ、それが」
同じクラスだった記憶はあるものの、あまり目立たない子だったので名前まではちょっと覚えていなかった。
「そっか。じゃ、改めて……塚本 みのりです」
「は、はい。柏木 千秋です」
「それは知ってるってば」
「あ、そうか」
「今日はね、柏木くんに言いたいことがあって……う、うまく言えるか、わ、わっかんないけど」
すると、何故だろうか。自己紹介まではスムーズだった塚本さんの様子がおかしくなっていく。
目は泳ぎ、声は震え……。どんどん挙動不審になっていく気がした。
なんだろう。これはやっぱり告白……なのか?
え? え? 大丈夫⁉︎
そんなことを考えていたら突然、彼女の言葉が耳に入ってきた。
「…………がね、好きなの!!」
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