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10.溺れれば夢中 9

え? 何て? 彼女の様子がおかしいとか思っているうちに、俺は一番大事なところを聞き逃してしまったみたいなんだけど! え? 何が好きだって⁉︎ 「あのさ……」 悪いとは思ったが、もう一度聞きなおそうとすると……。 「きゃーどうしよう。言っちゃった! 言っちゃった!」 彼女は全く俺の話なんて耳に入らないほど高ぶっているようで、全然話を聞いてくれない。 しかも、あろうことか彼女の話はそのまま続いていく。 「突然、言われても困るよね……。め、迷惑かな?」 どうしよう。話が全く見えません。 一体何が好きで、何が迷惑なんだ? 訳がわからず俺が固まっていると、塚本さんも表情が暗くなる。 それが原因なのかはわからないけど、塚本さんはまた一人でパニくりだしたではないか。 「ど、ど、どうしよう……」 いや、俺の方がどうしようだし! 俺が大事なところを聞き逃したばっかりに、なんかややこしくなってる気がする。 「あの……」 もう一度書き直そうとしたその時。 なぜか、塚本さんの鼻から……鼻血が出た。 え────っ!? 今度は何なんだよ⁉︎ なんなんだよ。この展開は。つか、なんで鼻血とか出てんの!? 「だ、大丈夫?」 「大丈夫、ちょっと興奮してしまって」 え? 何に!? いや、そんなことは今はどうでもいい。俺はポケットにあったハンカチを差し出すと、塚本さんはティッシュを持っているから大丈夫だと言った。 「柏木くんゴメン。私が呼び出したんだけど、これ以上喋る自信がなくて……この話は延期させてください!!」 そう言ったかと思うと、また猛ダッシュで走り去っていってしまった。 「え⁉︎ ま、待って……」 結局、何の話だったかわからなかった。 それに、なんだよ。あの塚本とか言う子……。 鼻血しか覚えてねぇ……。

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