151 / 622

11.甘く溶けていく 4

塚本というのはBL作家志望の同級生で、なぜか俺に萌えを感じたからと言って、何かと観察されている。 何でも、次の作品の主人公モデルが俺なんだとか……ふざけんな。 最初は俺も“塚本さん”なんて呼んでたけど神出鬼没で並外れた妄想力に疲れた俺は、いつの間にか塚本と呼び捨てで呼ぶようになっていた。 「また来たのか!」 「観察してるだけだから気にしないで」 「気になるわっ!」 俺がまた呆れていると、新藤が優しく塚本に話しかける。 「塚本さんこそご飯食べなくていいの?」 「わ、私はあんパンと牛乳があるから大丈夫!」 そう言って新藤に向かって持っていた牛乳とあんパンを見せた。 それを見た内川は「張り込みかよ!」と笑いながら突っ込んでいる。 塚本はだいぶ慣れてきたのか、鼻血も前ほど吹かなくなったしパニクる回数も減ってきた。 その代わり……。 「なんか新藤くんと内川くんとで、柏木くん板挟み!?」 変な妄想を繰り広げている。 その腐れモードで人を見るのをやめてもらえませんか。 そんなことを思っていると、塚本は何かを思いついた様子で慌てて走り去っていってしまった。 「いつものことだけど、嵐のような子だよね」 新藤が言うように、塚本は現れたと思ったらすぐに走り去っていく。 これは毎度のことだった。 本当に塚本は変わっていると思う。 すると内川がパックのコーヒー牛乳を飲みながら言った。 「やっぱ、柏木に気があるんじゃね?」 「だから無いって前も言っただろ? 観察されてるだけだ」 彼女が腐女子で俺を作品のモデル対象にしかみていないことを内川は知らない。 だから、俺らが恋愛に発展するのではないかと思っているわけだ。 「でもさ、気にならないわけ?」 「はぁ?」 「あれだけ追いかけられていたら好きになっちゃわないか?」 「なるわけねーよ」 「そうか? 結構、可愛いのに」 そう言うと内川はもう一口、コーヒー牛乳を飲んだ。

ともだちにシェアしよう!