152 / 622
11.甘く溶けていく 5
そんなことを言う内川に恐る恐る尋ねてみる。
「まさかとは思うが、好みなのか?」
「好みっつーか、可愛いと思うよ。言ってることも、不思議ちゃんって感じだし」
ふ、不思議ちゃんだと!?
こいつは塚本の腐発言をそう受け取ってやがったのか!?
「不思議ちゃんとか好きなのか!?」
「可愛くない? 新藤はどう思う?」
すると新藤は俺をちらっと横目で見ながらニヤリと笑った。
「うーん、僕は不思議系よりは悪態つくくらい強気な子がいいな」
「ブォッホッ」
新藤の不意な発言に食べていたパンを喉に詰まらせてしまった。
「千秋、どうかした?」
そんな俺に新藤はわざとらしく聞いてくる。
どうかした? じゃねぇし。お前のせいでむせてんだろ!
しかし、むせている俺のことなど気にしない内川は新藤の話に食いついてしまった。
これはまたヤバイ流れだ。
「そっかー、強気な子ねぇ。普段は強気だけど2人になるとデレっとしちゃう子って可愛くていいよな」
「まさにソレだね」
「ヤバいよな。もしかして彼女ってツンデレ?」
「うん。ツンツンしてるのが余計に可愛いんだけどね」
「マジか! ますます見てみたい」
「ブォッホッ」
また俺は新藤らの発言にむせる。
「柏木、さっきから大丈夫か?」
全然大丈夫じゃねぇよ。
お前らがそんな話をしてなかったらむせたりしねぇよ。
でも、そんな願いはいつも叶わない。
校内の有名人といってもいい新藤が付き合っている人の話題は未だにホットな話題であった。
特に内川は恋愛の師匠とまで新藤を崇拝するようになっていたから、彼女ネタが聞きたくてたまらないらしく、余計にやっかいだった。
これはなんとかしなくては。
「内川、お前日直だろ? 次の時間の準備しなくていいのか?」
「そうだった! 担任に呼ばれてたんだった! じゃあ先に行くな!」
日直だった内川が、どこかへ行ってくれてホッとした。
ともだちにシェアしよう!