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11.甘く溶けていく 7
──追試前日。
もう集中力は切れかかっていた。
「代入するのはこっちの値だよ」
「…………」
「千秋聞いてる?」
「聞いてない……」
ここは新藤の家なので2人きりだし、そんな悶々とした気持ちの中勉強なんて身になるはずもなく。
新藤に触れたい……。そればっかり考えてしまう。
でも触れたらめちゃくちゃ怒るかな。
新藤も溜まってるだろ? ……って思ってるけど、どうなんだろう?
……アイツも俺に触れたいかな。
でも、そんな気になっているのは俺だけだったら……嫌だな。
いろんな考えが頭の中を駆けめぐる。
勉強しなければまた新藤をがっかりさせてしまうのに。
新藤は自分のせいで成績が下がったというのは嫌らしい。
(むしろ上がっているのだが、追試というのが駄目だったみたいだ)
はぁ……欲求不満で勉強が手に着かないとか。どーなの。
そんなことを考えながら新藤のことを見ていたら、指が勝手に新藤の頬をチョンと触ってしまっていた。
「何してるの?」
「えっ? あ、何?」
自分で触れたにも関わらず、無意識だったため慌ててしまう。
「何じゃないよ。集中出来ない?」
「……ご、ごめん」
すると新藤は大きくため息をついて、席を立ち部屋を出て行ってしまった。
怒らせたかな?
さすがに集中力切れまくりはどうかと思うが、俺も限界だったし。
ちょっとした出来心でしたと言えば許してくれないかな。
どうしたらいいかわからず呆然としていたら新藤が何かを持って部屋に戻って来た。
「それ、何?」
「板チョコ」
「チョコ?」
「集中力が切れたときには甘いものを食べるといいんだよ」
そう言うと新藤はパキッと割った板チョコを1つ自分の口に放り込んで食べている。
そして俺の隣に座り、食べたい? と聞いてきた。
そんな時、ちょうど良いタイミングでグーって俺の腹の音が鳴ってしまう。
どんだけタイミング良いんだよ! は、恥ずかしすぎるだろ……。
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