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11.甘く溶けていく 8
俺の腹の虫の音を聞いて新藤が肩を震わせながら笑う。
「おなか減ってたんだ?」
「ち、ちげーよ。目の前でチョコ見せつけられたからだよ」
「食べる?」
「……食べる」
俺が素直に言うとクスッと笑った新藤はまたチョコをひとかけら割ってまた見せつけるように自分の口に放り込んだのだ。
「お、おい! 俺にも食わせろ」
そう言った瞬間、俺の口が塞がれる。
そして、新藤の舌の感触と共に甘いチョコレートが俺の口の中に広がった。
「ふぁっ……っ……ンンッ……」
久し振りのキスはいろんな意味で甘すぎる。
チョコレート味の甘い舌が絡まり、吸われたりして思わず新藤のシャツを掴んでしまう。
そして最後にちゅっと啄ばむようなキスをして唇が離れると、1度のキスで力が抜けてしまった俺をみて新藤が微笑んだ。
「千秋、可愛い」
「うるせー。接触禁止じゃなかったのかよ」
「千秋がもう限界って顔してたから特別」
「俺が限界なんじゃねぇ。お前が限界なんだろ!?」
俺だけが限界みたいなことを言われてムカついたので言い返してみるが。
「そんなの当たり前だよ。今頃気が付いた?」
あっさり言われてまたムカついた。
そんな俺を見て新藤はなだめるように言う。
「あと1日なんだから頑張って。明日、追試に通ったら何でもしてあげるよ」
「何でも?」
「うん。何でも」
そう微笑むのを見て、俺は少し俯きながら視線だけ新藤に向けた。
「……じゃあ、明日の夜泊まりに来い」
追試の結果はその場で出る。
ここまで頑張ったんだ。落とす訳ねぇ。
だから何でもいいなら明日がいい。
本当はずっと誘おうと思ってたんだけど、なかなかタイミングがなくて。
でも、新藤は驚いたのかそんな顔をしていた。
「千秋の家に?」
「ほかに誰んちがあんだよ」
「いや、いつも家に人がいるから泊まれないって言ってたじゃないか」
今まで確かに俺はそう言っていた。うちは新藤の家とは違い、絶えず家に誰かがいるのだ。
そこに新藤が泊まってみろ。
みんなが新藤見たさに俺の部屋にやってきてうるさくてしょうがねぇ。
それにシングルベッドでくっついていたら……。
双子の教育上良くない! 俺は良い兄だからな!
って、それ以前に兄がホモだなんて知らないわけだから余計にダメだ。
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