161 / 622

11.甘く溶けていく 14

人を好きになると、頭の中を溶かされていくみたいだ。 まどろんで、あいつしか見えなくなっていく。 新藤も溶けてるんだろうか……。 キッチンにもたれかかったままそんな事を考えていると、さっきの新藤の言葉を思い出した。 『ただ、千秋には素直に喜んでいてほしいな』 俺はこんなだから、きっと気づかないうちに新藤を傷つけてしまっている。 でも誤解されたくないからちゃんと話さなきゃいけないよな。 動きたくないほどぐったりしていたわけだけど、力を振り絞って思いっきり新藤に抱きついた。 いや、正確にはタックルというべきかもしれない。 抱きついた弾みで新藤が反対側に倒れるものの、そのままきつく抱きしめた。 「千秋?」 「新藤……ご、ごめんな!」 「何が?」 「俺……昔から気持ちを言葉にするのが苦手で、いつも肝心なときに思ってもないことを言ってしまうんだ。あまのじゃくだし理不尽だとも思う……」 恐る恐る視線をあげて新藤のことを見ると、何も言わずじっと見ているので俺はそのまま続けた。 でも、話してるうちにどんどん俯いていってしまうけど。 「俺、付き合ったりするのお前が初めてだし。たまにどうしていいかわからなくなることがあるんだよ。俺の何気ない言葉で……お前を傷つけたか?」 「傷ついてなんかいないよ」 そう言って新藤は笑って言うけど、俺は不安でたまらなくなる。 「本当か? 本当なのか? 些細なことでも傷ついたり不満があるなら言ってくれ!」 「……そうだなぁ」 何も言わないのかと思っていたら、言いかけたので驚いてしまった。 「な、な、何かあるのか!?」 「言わない方がいい?」 「い、言え!」 何かありそうな様子を垣間見せる新藤に、自分から言えと言ったもののドキドキしながら返事を待った。 「さっきのはちょっと傷ついたかな?」 さっきのというのは、やっぱり飯を食う食わねーのくだりだろう。 やっぱり俺ってやつは……。

ともだちにシェアしよう!