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11.甘く溶けていく 19
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「うんまいっ!」
俺がガツガツとシチューを食べていると新藤は嬉しそうな表情を浮かべている。
「それで弟くんたちの修学旅行先はどこなの?」
「信州だって。わさびソフトクリームを食ったらしい。昨日、電話があった」
「そっか、僕らももうすぐ修学旅行だね」
そうなのだ。
うちは中学生の双子達だけでなく、高校2年生の俺も修学旅行が近づいてきていた。
「千秋は京都って行ったことある?」
「ない。新藤は?」
「僕もはじめて。だから楽しみなんだ。親公認の千秋との旅行だしね」
「なんだそりゃ」
俺らの修学旅行先は京都だった。
修学旅行ってだけでも楽しみだけど……。
「自由時間にどこに行くか決めようね」
自由時間かぁ……。
新藤とだったら何処でも楽しいだろうなぁ。
なんて、こないだガイドブックで見た写真を思い浮かべながら、新藤と回っているところを想像した。
や、やべー。これは、気をつけていないとニヤけてしまいそうだ。
俺はパシパシッと頬を叩いて残りのシチューを口に運ぶ。
それから他愛もない話をしながら、なんとかニヤけずに食べ終わると片付けをして、俺の部屋に向かった。
「新藤、風呂入れよ」
食事をしている間に風呂を沸かしていたので、トレーナーやスウェットなどを渡すと新藤はそれらを受け取りながら俺の手を掴んだ。
「一緒に入らない?」
「い、一緒になんか入るかよ! お、お前が先! 俺はあとで入る」
俺が焦ってトレーナーを押しつけるように渡すと、新藤は「残念」と言いながらも楽しげに笑いながら風呂に向かう。
またからかわれたんだと思った。
なんか、俺ばっかり焦ってかっこわりー。
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