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11.甘く溶けていく 31
──パタン
戸が閉まる音で目が覚めた。
重たい瞼を少しあけると、新藤の姿はなく、さっきのドアの音は新藤が部屋から出て行った音だというのがわかった。
今は何時なんだろう?
いったい俺は何時間くらい眠ってたんだ?
つか、だりー……。
体がだるすぎてすぐにまた瞼が閉じてしまう。
まだ当分起きあがれそうにない。
するとまたガチャっとドアが開く音が聞こえ、新藤が部屋に入ってきた。
そしてベッドに座り、俺の頭をなでている。
だるすぎて動けない俺はずっと目を瞑っていたので寝ていると思ってるんだろうか?
そんなに優しく撫でられると本当に寝てしまいそうだ。
そして新藤は撫でる手を休め、今度は俺の頭にそっとキスを落とす。
なんか、やられっぱなしなのもかなり恥ずかしいものだ。
コイツはいつも俺が寝ているとき、いつもこんな事してるのかな?
新藤は優しい手つきで俺の顔や髪などに触れていく。
普段は寝ていて知らなかった一面を感じられて、少し幸せだと感じたその時。
新藤がポツリと呟いたその声は、ありったけの切なさを含めて発せられていた気がした──。
「千秋は僕と付き合って後悔してないかな……?」
え? 何だと……!?
新藤のあまりにも深刻そうな声色が俺に混乱を招いた。
今思えばそこで飛び起きて真相を聞けばよかったんだけど、俺は頭の中で新藤の言葉を繰り返すのが精一杯で……。
そうしているうちに、新藤の携帯に電話がかかってきて、部屋を出て行ってしまったのだ。
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