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11.甘く溶けていく 34
いや、ちょっと待てよ俺。今、何フツーに女役受け入れてんの!?
クソー……今に見てろよ、新藤。
いつか、ぜってえお前を襲ってやる。
そう心に誓ったとき、後ろからぎゅーっと抱きしめられた。
「千秋の百面相」
「お、お前、いつの間に後ろに回ったんだ!?」
「さぁ、いつでしょう?」
そんな風に耳元で喋ると息がかかる。
簡単に後ろを取られてムカムカしていると新藤が言った。
「何考えてたの?」
「何でもいいだろ?」
「僕のことだろ?」
「なっ、……」
また心を読まれたのか!?
と思いびっくりして振り返ると、また新藤はニヤニヤ笑っていた。
またハメられたんだと思った。
「僕のこと考えてくれてたんだね? 嬉しいな」
「うっせーよ。考えてなんかねーよ! つか、くっつくなー」
「僕はいつでも千秋のことばかり考えてるよ」
「他のことも考えろ、ボケ」
新藤の聞き心地の良い声で言われるとそれだけで心地よくなってしまいそうになるのをぐっとこらえて、精一杯の憎まれ口をたたいたのに、こいつは怯むどころか……。
「悪態ついて可愛い千秋を見てたら襲いたくなってきた」
「昨日、あれだけヤッといてまだする気かよ!」
「千秋が望むなら」
「俺は望まねー」
望まないと言ったのに新藤は俺の頭に頬をすり寄せるのをやめない。
「おい、やめろ」
「こうしていると、ずっとしてたくなる。千秋の髪って柔らかくて気持ちいい」
今日の新藤はなんか変かもしれない。
テンションがいつもと違うというか。
いつもはここまでベタベタしない方だと思うのだが……。
「離れろって!」
俺が強引に振り返ったとき、新藤と目が合った。
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