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12.とびきりを届けたい 3
塚本に呆れながら、振り返ると新藤も笑っていた。
「さっき先生と何の話してたんだ?」
「修学旅行の話だよ」
「そう……」
そして新藤の顔を見ながらさっき塚本と話したことを思い起こしていた。
やっぱり名前で呼んでもらいたいものだろうか……。
新藤はそのことで文句を言ったことは無いけど、あいつなら我慢するとか、ちょっとありえそうとなとこもあるし……。
やっぱり、聞いてみるべきだよな。
“修平”って呼んでもいいか? って。
でも、たったこれだけのことなのに、改めて言おうとしたらすごく勇気がいることで。
俺は思い切り息を吸い込んだ。
「しゅ……、しゅ……、しゅー……」
しかし、あまりの緊張に続きが出てこない。
「何? 蒸気機関車の真似でもしてるの?」
「してねえよ!」
クスクス笑う新藤にムッとしながらも、気を取り直してもう一度。
「し……」
そんな時にタイミングよく予鈴がなった。
なんでこのタイミングなんだよ! バカヤロウ。
もたついている間に予鈴のチャイムとだだかぶりするという失態。
ただ名前を呼ぶと言うだけの単純なことなのに……ヘタレすぎて泣きそう。
その時は、結局そのまま教室に入ったのだけど、それから何回も呼ぼうと試みた。
でも、単純に恥ずかしいから内川とかがいないところで(塚本なんかもってのほか)と思っていたら放課後になってしまった。
だったら帰り道で再チャレンジだ! とばかりに、HR後に新藤のところに寄っていく。
「新藤、帰ろうぜ」
「ごめん。今日は一緒に帰れない」
「なんで?」
「委員会があるから」
「そっか。待っとこうか?」
「遅くなるからいいよ」
なんとなく出鼻をくじかれたような気がした。
別に何時になっても待てって言ってくれたら待つのに。
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