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12.とびきりを届けたい 4
本人が言うなら仕方ないけど、せっかくだから委員会がある教室の前まで一緒に歩いていく。
その時に、新藤に気付かれないように深呼吸した。
そして、新藤が教室に入ろうとした時に……俺は意を決する。
「なぁ、しゅ……修平!」
すると、新藤はかなり驚いたのか、目を見開くようにして振り返ったから。
焦って思わず、
「……って、呼んでいいか?」って、照れ隠しでそう付け足した。
でも、きっとコイツなら笑顔でいいよって言ってくれるはずだと思っていた。
しかし、返ってきた言葉は……。
「それは……ダメ」
え⁉︎ なんで⁉︎
思いもしなかった答えに、軽くパニックになる。
「なんで? 嫌なのか?」
「嫌じゃないよ。嬉しい。でも……ダメ」
嫌じゃないのにダメって、意味がわからない。
歯切れの悪い言葉にもイライラする。
もう一度問いつめようとしたとき、教室の中から声が聞こえた。
「新藤、始めるぞ」
「あ、はい。それじゃ、行くから」
無惨にもピシャッとドアが閉められてしまう。
暫くその場に立ちすくみ、今日の俺の緊張って一体、何だったんだろうって、そこに残された俺は考えていた。
どうしてダメなんだ? 嫌じゃない嬉しいって言ったのにどうしてダメなんだよ。
なんか……イライラしてくる。
新藤なんかクソだ!
委員会が終わるまで待っているつもりだったがもう帰ってやる!
そして、帰って靴を脱ぐなり部屋へと駆け込み、ベッドにダイブすると枕をボコボコと殴りつけた。
ムカつく! クソ新藤!
どうして修平って呼んじゃダメなんだよ!?
俺がせっかく勇気を出して言ったのに。
もしかして、もう俺のことなんてどーでもよかったりして。
……って、自分で言ったのに傷ついて。
そしてもう一回枕を軽く殴ると、ハァっとため息をつく。
バカだ。俺……。またグルグル考えてる。
そして、また自然とため息が漏れた。
……やっぱり新藤と話をしよう。
そして、理由をちゃんと聞かないと。
勢いのまま帰って来たけど、やっぱり俺はもう一度、学校へ戻ることにした。
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