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12.とびきりを届けたい 6

次の日も、昨日見た光景のことばかり考えていた。 あいつは誰なんだ? って、新藤に聞いてやりたい。 どうして俺は名前で呼んじゃいけないのか、理由が知りたい。 ハッキリさせたいのに、新藤は休み時間の度に用事があるのか先生に呼び止められていて、なかなか聞くタイミングも掴めないでいた。 あームカムカしてくる。 昨日からずっと同じことばっかりぐるぐると考えすぎて、気分がずっと晴れない。 忙しい新藤は、昼休みにも担任に呼ばれている。 何をそんなに忙しくしているのか、担任に呼ばれて新藤が教室を出ていくのを視線で追いながら、購買で買って来たパンをかじった。 するとその様子を内川も見ていたようで。 「なんか新藤、忙しそうだな」 「……うん」 うっかり生返事みたいになってしまうと、今度は内川が俺の顔を覗き込む。 「柏木は元気ないな」 「……うん、いや。そんなことねぇよ」 思わず頷いてしまって慌てて否定すると、内川が俺の肩を強く叩いた。 「なんだよ! シケてんなぁ! 今日、ゲーセン行くか?」 「うーん……」 「元気ないときはゲーセンだろ!?」 「そうだな!」 今日こそは新藤と話そうと思ってたけど、でもどーせ、今日も新藤は委員会やら何やらで忙しいだろうし、俺は俺で遊んでやる! 内川と放課後に遊びにいく約束をして、俺は残りのパンを頬張った。 お前がいなくたって寂しくなんかないし! お前がいなくたって俺は楽しいし! そう思いながら、結局新藤とは放課後まで話すことはなかった。

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