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12.とびきりを届けたい 7

放課後は久しぶりに内川とゲーセン巡りをして、スカッとするゲームを中心に日が暮れるまで遊んで。 そして、そろそろ帰ろうかとなった。 俺は本屋に寄って帰ろうと思ったので、そこで内川とはわかれ駅前の本屋に向かう。 そういえば欲しかった漫画の単行本があるから、それを買って帰ろう。 今日は思う存分読みふけてやるんだ! そして本屋で少し雑誌の立ち読みをして、目当てだった漫画の単行本を買い店を出て大通りに出る。 目当てだったものに加えて、他にも面白そうな新刊を見つけたし。 早く帰って読もーっと。 好きな漫画が買えて落ち込んでいた気分も浮上して、気持ち良く歩いていたのだが。 そのとき大通りで大きなクラクションがなった。 音の方をみると止まろうとしていた車に、後ろの車が警告したような……そんな感じだった。 なんだよ、びっくりさせんなよ……。 と思ったとき、俺の視線はそれ以外もとらえていて。 そのクラクションさえならなければ気付かずに済んだのに。 その視界に入ってきたのは……。 「……なんで、新藤?」 道路の反対側に、昨日の眼鏡男と笑いながら歩く新藤がいた。 一気に上がっていた気分が落ちていく。 ただ歩いているだけなんてよくあることだ。 俺だってさっきまで内川と一緒にいたんだし。 でも、今の俺の頭の中には“なぜ?”やら“どうして?”みたいに似たような疑問符ばかりが浮かんでくる。 一緒に歩いている男は新藤のことを“修平”と呼ぶ。 それだけで、不安ばかりが大きくなっていく。 最初は少しのキズだったはずだ。 でも、今はそこから左右に切り裂かれたような……。 俺ってこんなにも女々しいやつだったのか。

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