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12.とびきりを届けたい 8
───…
昨日はどのようにして家に帰ってきたのか、覚えていない。
それくらい衝撃だった。
本当に小さい男過ぎて泣けてくるけど、学校だって休みたいくらい。
しかしズル休みが母さんに通じるわけもなく。
「双子に示しが着かない」と怒鳴られ殴られ多少遅刻したが渋々、登校すると。
「千秋、おはよう。どうしたの? 寝坊?」
「うん。まぁ……」
教室はいつもと変わらない。
新藤だっていつもと変わらない。
俺はもう一度だけ新藤に、修平と呼ばせろと言うつもりだった。
いいよ。って言ってくれたら、昨日のも見なかったことにして胸にしまえると思ったからだ。
だから、次の休み時間に新藤の席まで行って声をかける。
「なぁ……。やっぱり修平って呼びたい」
でも新藤は困った顔をして俺に言う。
「……だから、ダメなんだ」
「理由は?」
「…………」
言いにくそうにしている新藤に苛立つ。
なんだよ……嫌ならハッキリ言えばいいじゃないか。
「新藤……今日の放課後って時間ある?」
「今日? ごめん……」
また、か……。
最近はこんなすれ違いばかりな気がする。
「委員会?」
「いや、今日は人に会うから」
まさか、あの眼鏡男だろうか。
俺より眼鏡男を優先するってのかよ!?
「じゃあ、もういい……」
吐き捨てるように告げて教室を出ると新藤が焦った顔つきで追いかけてきた。
「どうしたの?」
……どうしたの、じゃねえよ。
「別に」
「今日は特別な日か何か?」
「そんなんじゃない」
「じゃあ、何をそんなに怒ってるんだよ?」
宥めるように伸びてきた新藤の手を振り払う。
「怒ってなんかねえ!!」
思わず語気が強まった俺の声は、廊下の端にいた人ですら振り返らせてしまうほど大きくて、そんな自分の声で自分の心の傷まで完全に裂けた気がした。
「そう……」
と背を向ける新藤を見つめながら、俺も背を向けて歩き出す。
くそっ、人の気も知らないで。
お前なんてこっちから願い下げだ。
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