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12.とびきりを届けたい 11

「待てよ……」 ジュポジュポと唇で上下に扱くと、柔らかかったモノがだんだんと硬くなってきた。 なのに……。 「待てって言ってるだろ!」 無理やり口を離されて、俺にされる事がそんなに嫌なのかと思うと────絶望した。 「……そんなに嫌なのか?」 俺がそう言うとさらに新藤は困惑した顔をしていた。 そんな顔をしたいのは俺の方だ……。 もうヤケにも近い気持ちになって、新藤のことを組み敷く。 「千秋?」 俺はそのまま新藤を見下ろしながら言った。 「そんなに俺にされるのは嫌かよ! あの眼鏡男のがいいのかよ!」 「千秋、何言ってんの?」 「くそっ、あんな眼鏡男がどうして……。どうして……」 「落ち着いて……」 新藤が俺のことを宥めるように撫でるけど、でも俺の気持ちは落ち着くどころか高ぶっていく。 次第にその感情の高ぶりは俺に大粒の涙を流させた。 「どうして、あの眼鏡男はいいのに俺は修平って呼んじゃいけないんだよ!」 ポタポタと涙の粒が新藤の頬に落ちていった。 人前で泣くなんて、恥ずかしいのに止めようと思っても止まらない。 そのまま俺は高ぶった感情ごとぶつけるしかなかった。 「お前、俺に言ってくれただろう? 追試の夜に耳元で “愛してる” って……。恥ずかしかったけど、俺……それだけで軽くイッちまうくらいめちゃくちゃ嬉しかったのに。それは嘘だったのか!?」 思い出すのはあの幸せだった夜のこと。 俺の話をじっと聞いている新藤を見下ろしていると涙がどんどん零れ落ちていく。 俺はお前を失いたくねえよ……。 「ちゃんと話したいのに、お前は忙しいって言って話できないし! 変な眼鏡は現れるし。俺以外の奴に笑いかけるな。俺以外の奴に触るな。俺以外の奴に触らせるなよぅ……うっく……」 泣きながらなんてかっこわりー。 もうダメだ……。絶対に嫌われた。 そう思った瞬間、なぜか暖かい胸の中にいた。 「な、なんだよ……」 顔をあげると。 新藤は物凄く切ない顔をしていた。 「ごめんね。僕がいろいろ誤解させたね」 でも物凄く優しく包み込むような声だった。

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