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12.とびきりを届けたい 12
新藤は俺の涙を拭い引き寄せて抱きしめた。
そして耳元で新藤の声が響き始める。
「あの人はね、姉貴の彼氏だよ」
姉貴? って新藤の姉ちゃんの……か、彼氏だと!?
「姉貴にサプライズするからって計画を練るのを手伝ってたんだ。もう長い付き合いだから僕も兄貴みたいに思ってるんだよ」
姉ちゃんの彼氏だったんだ……って、盛大に勘違いしていたことが恥ずかしくて、新藤のシャツを握りしめたまま顔が上げられずにいると、新藤はぎゅっと力を込めてまた俺のことを抱きしめながら続ける。
「なんか、僕。千秋に何かを告白されるときっていつも押し倒されてるね」
ゆっくり顔をあげると、クスリと笑うと新藤は俺の髪を撫でながら目を細めた。
「……千秋に修平って呼ばれるのは凄く嬉しいよ」
「でもお前は嫌がったじゃん」
「嫌じゃない。駄目だと言っただけ」
「俺にとっては同じだ。どうして?」
「…………」
黙っている新藤を見上げてみると、新藤は見たことないくらいに真っ赤になって頭を掻いていた。
え? 新藤が真っ赤になってる……。
初めて見るその表情に、ますます理由がわからなくなる。
「なぁ、教えてくれ」
すると小さくため息をついた新藤は、意を決した様子で俺のことをみた。
「笑わないでね」
「笑わないから早く言えよ」
なかなか言い出さないコイツに苛立ちが隠せなくなってくると、新藤は重たそうな口を開いた。
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