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12.とびきりを届けたい 14

ぎゅっと力を込めて抱きしめる新藤の腕がいつもより強くて少し痛い。 「ちょっと痛い……」 「少しだけ我慢して」 「修平……」 俺が名前を呼ぶと、新藤の体がぴくんっと反応した気がした。 ただ名前を呼ぶだけでこんなにも正直な反応を目の当たりにすると愛おしく感じる。 「修平……修平……」 「そんなに連呼しないで」 「嫌だ。もっと呼ぶ」 そう俺が言うと新藤は顔を赤らめて観念したかのように見えた。 困ったように眉尻を下げる表情がなんか可愛く思えて仕方なくて、なんか堪らない。 「今日は俺が修平を抱いてやる! 今、決めた」 突然、俺が宣言すると新藤は赤らめた顔から一瞬、目を丸くしたけど。 すぐに面白いものでも見つけたようにニヤリと笑い俺に問いかけた。 「へぇ、出来るの?」と……。 童貞だからってなめるなよ。俺だってお前を抱きたい。 俺の童貞くれてやる! それくらいの気持ちで新藤を押し倒した。 「修平、俺以外なんか見るなよ」 「僕の目には千秋しか映らないよ」 もう黙れ……。 そう思いながら俺が唇を塞ぐと、そのまま舌を新藤の口腔内にしのばせる。 新藤の舌を捕らえて絡めて、時には吸い上げる。 そうしていると腰に当たっているモノがさらに固く変化していくのがわかって少し嬉しい。 そして俺は、俺の中で起こっている変化にも気がついた。 「もっと早くにお前の名前を呼んでいれば良かった」 「どうして?」 「名前呼ぶ度に、なんか満たされるから」 「僕が君の名前を呼ぶときと一緒だね……」 そうして“修平”と笑い合うと俺は、まだ中途半端にしか外していないシャツのボタンを一つずつはずしていく。 あらわになった肌に舌を這わせると、ぴくりと反応した。 「修平……。俺の印、たくさんつけてやる」 耳朶に軽く歯をあてがい、そのまま首筋に2つ吸い付く。 「………っ…」 「やっぱ、お前って首筋弱いだろ?」 「言っただろ? 千秋に触られていたらどこだって気持ちいいから」 「修平……」 名前を呼ぶだけでこんなに近くに感じられるようになるなんて思わなかった。 “新藤”って呼んでいたときと、“修平”って呼んでいる今。 今の方が、断然愛おしい。

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