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12.とびきりを届けたい 21
「いいから言え!」
少し語気を強めて言うと、ため息を漏らした修平が心を決めたように顔を上げた。
そして、また大きくひとつため息をつく。
「僕はさ……、千秋が最初に家に来た日も次に来た日も、半ば強引にシただろう? だから、その……付き合ってくれてる理由が気持ちよかったから……とかだったら……って……なんていうか……」
みるみるうちに修平の言葉の歯切れが悪くなってくる。
今までに見たことがないくらいしどろもどろになっている修平にも驚いたけど。
でも、そんな理由だったのかと、ちょっと安心したと同時にがっかりもした。
「おい、修平!」
俺が呼び掛けると、修平が顔を上げる。
「見くびるなよ。俺はいくらなんでも嫌ならぶっとばす! そんなこんなでズルズルなんて行かねー。ただ……ただ、俺は修平を好きになった! それだけだ! 悪いか!」
啖呵をきるように言い切ると、修平は目を丸くしていたけど、その目が細まりそっと抱き寄せられた。
「全然悪くない。そんなことを思った僕の方が悪いよ。ごめんね……」
またそうやって触れた修平の唇は暖かくて、胸がいっぱいになる。
すると修平は俺を抱きしめながら噛みしめるように息を吐いた。
「僕。今、めちゃくちゃ幸せ」
「な、なんだ? いきなり」
「嫉妬したんだろ? 俺の修平に触るなって」
「…………!?」
そうだった。
つい、カッとしてしまって修平の姉ちゃんの彼氏だとは知らずに……。
殴ってしまったことや、言ったことを思い出して、あたふたしだすとクスクス笑いながら修平は「大丈夫だよ」って言いながら頬を撫でる。
「その前に、千秋が怒ってたからさ、嫌われたかと思ったんだよ。だから余計に嬉しかった」
ポツリポツリと喋る修平の声が俺の体中に響いていく。
「好きだよ……千秋」
俺もだよって伝えるように、そこは俺からキスをして、また少しだけ抱き合った。
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