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13.修学旅行一日目 3
バスが二条城に着いた頃には既にぐったりしていた俺……。
誰も気付いたりしないと思う、それに万が一の時でも修平がうまくやってくれるだろう。
でも、わかっていても周りが気になって仕方なくて普段の何倍も疲れた。
「どうした柏木。バス酔いか?」
頼むから内川! いきなり振り返るな!
不意に内川が振り向いてくるものだから凄い形相で睨み返せば、内川は非常に驚いた顔をして、修平は笑いを堪えるようにして肩を震わせている。
こっちは大変なのに良い気なもんだ。
さすがにバスを降りる前に手は離してくれたけど、まさか修平はバスに乗る度に手をつなぐ気なんだろうか?
修平ならやりかねない。
別に手を繋ぐのは嫌じゃねぇし、むしろカップルぽくて嬉しいんだけど……。
まず、心臓が持たねえ。これが一番の問題だ。
ただですら、修学旅行中はいつもより一緒にいれるけど、いつもより触れ合う時間がないのにさ。
逆に生殺しなのでは!? って思うわけだ。
まさか、新しいプレイか!? んなわけねぇか。
色んなことを考えすぎてため息をつく。
このまま城の周りをランニングしてるおっさん達に紛れて頭を冷やしてこようか、なんて思いながらぼーっとその風景を見ていると。
「柏木ー! 早く来いよー」
いつの間にやら一行は俺待ちになっていたので、俺はそそくさと合流した。
そして、クラス単位で二条城を見学していく。
ガイドの人がいろいろと説明してくれているけど、一番後ろの方にいたからあまり聞こえない。
聞こえていたとしても、ぐったりしてた俺の耳には入らなかったかもしれないと思うと二条城に申し訳ない気すらしてきた。
ごめんなさい。帰ってからちゃんと勉強します……。
そう思っていたのだが、途中から修平が俺だけに聞こえる声で説明してくれた。
「二条城はね、徳川家康が宿館として建設した平城なんだって……」
なのに俺ってば、修平の息が耳にかかるたびにドギマギしてしまって。
はぁ、せっかく説明してくれてるのに、なんか自己嫌悪……。
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