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13.修学旅行一日目 6
赤い布が敷かれた椅子に座って待っていると着物を着たお姉さんが抹茶とお菓子が乗ったお盆を持ってきてくれた。
本格的な抹茶なんて初めてで、すぐに一口飲んでみる俺と内川。
そして同時に「苦い!」と叫ぶと、同じように抹茶を飲んでいる他の観光客の人がクスクスと笑い、つられて俺たちも笑いながらお菓子と抹茶を楽しんでいた。
お茶菓子を口に運んでいると、内川が俺の肩を叩いて修平の方を指差す。
「見て見ろよ。新藤ってば京都でもモテモテだぜ」
その方向を見てみると、俺たちのお茶を持ってきたお姉さんたちが修平を囲んで何か話をしている。
俺たちの視線に気づいたのか、修平は話を打ち切ってこちらに戻ってきた。
「新藤はどこに行ってもモテるな」
「いや、飲み方を教えてくれただけだよ」
そう修平は言うけど、きっとあの人たちはそれにかこつけて修平と喋ったんだろうし、それをモテると言うんだ。
あの人たち、俺らには飲み方とか教えてくれなかったし。
すると、なぜか内川の表情が暗くなる。
「新藤くらいモテてたら百発百中だろうな……」
と言いながら、内川が珍しくため息をついた。
「そんなことないと思うけど?」
「いや、彼女だってすぐに落ちたんだろ?」
「そんなことないよ。1回目の告白は信じてもらえなかったし、逃げられたこともあるし」
う……。また嫌な流れだ。
「マジか。新藤も苦労してゲットしたんだなぁ。俺が諦めていたら駄目なんだな」
そう言いながら2人は妙に意気投合して最後の抹茶を飲んでいた。
俺は既に飲み終わっていたので先に土産物屋に移動することにする。
抹茶は苦かったけど、良い経験だった。
今日だけでもかなり京都を満喫した気がしたので、帰ったら双子たちに自慢しよう。
そして土産物屋でいろいろ見ながら樹に金閣寺キーホルダー、咲良にご当地のキャラクターキーホルダーを買うと集合時間になっていた。
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