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13.修学旅行一日目 9

一足先に大浴場から出てくると女子のグループに捕まった。 「ねぇ、柏木! 新藤くんはまだ?」 「まだ中にいたけど……」 それだけ聞くとそいつらはキャッキャ言いながら鏡を何度も何度も見てお互いの身だしなみを整えているようだった。 「千秋、ごめんね」 そこに遅れて修平がやってくる。 すると女子達は俺を押し退けて修平の前に集まった。 「きゃー! 新藤くん! あの私たちの部屋に遊びに来ない?」 「用事があるから」 本当は用事なんかないくせに、修平は間髪入れずに断りを入れている。 修平はこういったとき物腰は柔らかいものの妙にクールで、それ以上この話をさせない雰囲気をかもし出す。 かと言って嫌みもなく、断られたところで相手に不快感は与えない。 そんな修平は、俺が知ってる修平とは別人みたいに思うんだ。 いわゆる、外面の新藤修平。 そして、こいつの面の皮はめっぽう厚い。 でも今は修学旅行中。 女子たちも1度や2度断られたってめげやしないわけだ。 めげない女子たちは食らいついていく。 「じゃあ、写真だけでも」 「僕、写真は嫌いなんだ」 そしてまた修平は間髪入れずに断るからそこから会話は弾まない。 修学旅行というのは変なノリみたいなのがある。 普段は引っ込み思案な奴でも積極的にさせたりする独特な雰囲気というか。 修平はそれでなくてもモテるのに、さっきから廊下を歩けば女子に呼び止められまくりで、その都度修平は鉄壁の笑顔でするりするりとかわしていく。 さっきからそれの繰り返しだ。 修平に付き合っている人がいるのはみんな知っているのだが……。 その人気は衰えを知らない。 そんな修平を少し離れたところから見ていると、内川が真剣な顔をして俺に話があると言ってきた。

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